特殊清掃の独自色

経営マインドを持つことは、変革のリーダーシップをとるということでもある。 はやっていけない」「先日、経営状態がおかしくなった企業が、一度工場を見てくれと言うので見に行ってきた。
まずそこの最初の工程である機械工場に行ったら、担当の課長が大きな生産性の推移グラフを前にして、この工場がいかにして改善活動を一生懸命に展開し生産性を上げてきているかを説明した。 そこでその工場の隣をのぞいてみたら、その機械工場での完成品が山になって積み上げてある。
下のほうにある製品はすでに錆が出ていて使い物にならない。 この企業は基本的には製品が売れなくなって業績がおかしくなったのである。
製品が売れないのに生産はどんどん行い、それも『生産性』を上げると称してざらにより多くの在庫を積み上げている。 これではますます資金繰りが苦しくなり、企業としてこの企業の管理者は自工程の改善にはたしかに熱心ではあったが、残念ながら「経営マインド」は持っていなかったと言える。
この課長が、課長としてやるべき改善は「製品が売れなくなったら、自工程の生産も停止する」という仕組みをつくることである。 管理職に経営マインドを持たせるための教育は各社でなされているが、一般的にはビジネススクールで行われているケーススタディやシミュレーションゲームを用いることが多い。
このような教育は大企業ではなされていても、中小企業で行われることは少ない。 しかし、経営に関する「知識」を持たせるのと、「マインド」を持たせるのとでは根本的に異なる。

ビジネススクールで教えられるようなことで「マインド」が身につくわけではなく、現場主義の中小企業で「経営マインド」を持った管理者がたくさんいる会社は少なくない。 IEマインドという言葉がある。
Kも若い頃は工場でIE(インダストリアル・エンジニアリング)活動を行っていた。 IEとは簡単に言えば、現場の設備と作業者の「動き」のムダを省く活動である。
最初はどのようなムダな動きがあるのかを観測する(タイムスタディとか、モーションスタディと呼ばれる)。 そこから問題点をつかんで改善する。
しかしこの活動を何年も続けていると、一歩工場に入れば意識しなくてもムダな動き方が勝手に目に飛び込んでくるようになる。 このような状態になったとき、IEマインドが身についたと言う。
「こんなに完成品在庫を持っていて会社は大丈夫でしょうか」と言う現場の監督者がいれば、彼こそ「経営マインド」を持っているわけである。 作業改善レベルの話であれば「経営マインド」は必要ない。
現状のシステムの「どこかがおかしい」と直感が働くところに経営マインドは生まれている。 「会社が変わった」という場合には、必ずそこには経営マインドを持った管理者がいる。
管理者がどこまで経営という観点から自分の職場の問題を考えることができるかが大切である。 O氏は「T方式はMIEである」とよく説明していた。
これは「儲かるIE」という意味で、その改善が「儲かる」改善であるか否かが判断基準だった。 「そんなことをやったって儲からんぞ」「あ、そりゃ儲かるな」といったセンスが、現場の監督者にも経営マインドとして求められている。
経営マインドを身につけさせるにはどうすればよいか。 その方法論として非常に効果があるとKが考えているのが次の三つである。
問題が発生したら「なぜを五回」を必ずやらせる。 考えた改善案が「負けないための改善」か「勝つための改善」か、を必ず分類させる。

管理者自主研に必ず参加させる。 この三つの活動を持続的にやらせると、一年くらいたつと本人は意識していなくとも考え方に変化が出てくる。
ずいぶん前になるが、KがTの関連会社の生産管理課長Aから聞いた話をしよう。 ある緊急処理の一件で、A課長の部下の監督者がTの監督者の世話になった。
A課長はちょうどTの工場に出張する用件があったので、その部署に出向いて世話になった監督者の上司であるB係長に会い、「先日はどうもありがとうございました」と礼を言った。 すると、そのB係長から次のような言葉が返ってきたというのである。
「あなたは課長さんでしょう。 課長さんがなぜ今回のような日常的な処理の件でわざわざ礼を言うんですか。
たしかに、その件については部下から報告は受けています。 でも、その処理は部下の監督者の権限でやったことで、私ではありません」。
礼くらいでそこまで言うとは、この係長は素直でないなと感じつつ、「では課長はどんな仕事をするのですか」とA課長が質問した。 すると、B係長は「会社に来たら、課長はまずじっくりと新聞を読むことです」と答えた。

「新聞を読んでいればいいんですか」「そうです。 課長が新聞を読んでいれば、われわれ部下は、課長は明日以降のことを考えていてくれるんだなと安心して今日の活動ができるんです」「では、あなたは係長としてどんな仕事をしているのですか」「私は技術員をいかにうまく使って改善活動を進めるかを考えています。
日常的な仕事の監督責任は部下の監督者にあります」。 どうも優等生の発言を聞いているようで、内心〈これは建前の話をしてるんじゃないか〉とA課長は感じたらしい。
そこで、ついでに用があって行ったTの別の工場の現場でも、係長をつかまえて同じことを聞いてみた。 「あなたの仕事は何か」といきなり聞かれた係長は、一瞬こいつは何者かと怪しそうな顔をしたが、問いに対しては「技術員をうまく使って改善活動を進めるのが私の仕事だ」と跨躍なく答えが返ってきた。
前の工場の係長が言ったことと同じである。 Tはよく金太郎飴と言われるが、こういうことなのか、とA課長は妙に感心していた。
ただ現状のTの課長のありさまは、会社に来たらまずじっくり新聞を読む、というほど極端ではすでになくなっている。 やらねばならないことも多くなっているからだ。
しかし日常のオペレーションの中心が係長である、ということ自体は現在もその通りである。 これと似たような話をもうひとつ、KはTグループの部品メーカーのB部長から聞いた。
部長になったばかりのBさんが、Tの部長のところへ新任の挨拶に出向いたときのことである。 自分のところにもかかわりがあることなので、BさんはTの部長に、「この部門を今後どのような方向にもっていこうとしているのか」という趣旨の質問をした。
すると「そんなことを私に聞かれてもわからない」とあっさり言われたというのである。 と話をした。
面食らったBさんは、「ではだれならわかりますか」と聞くと、部長は五十人くらい人がいる事務所をざっと見渡して、「あいつがいちばんわかっているかな」と、後ろのほうの席にいる三十代半ばくらいの若い社員を指差した。 「では彼に聞いていいですか」と了解を得てBさんはその若い技術員に歩み寄った。
そのとき、こういうやりとりがあったという。 「この部門の方向性をいちばんわかっているのは君だと部長が言っていたけど、どうしてまだ若い君がいちばん知っているの?」「では逆にお聞きしますけど、どうして部長とか役員にそれがわかると言うんですか。

わかるはずがない。 わかるのはわれわれなんです」。

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